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靴磨きのやり方、靴の選び方「本音」をプロが詳しく解説します

プロの目線で靴磨き、お手入れ、サイズ選びを解説します

靴磨きのやり方をプロが解説 クリームの選び方 〜基本編〜

 靴磨きすべてに言えることですが、「これが正解」というのが存在しません

でも「これは不正解」はちゃんとありますので、そこを押さえて失敗しないようにしましょう

 

まず大事なのは「目的」です

靴を買ったら「その靴を何年ぐらい履きたいか」を、まず決めてください

 

それが「ワンシーズン持てばいい」「修理をする気はない」ということなら、お手入れ方法は何でも構いませんし、むしろメンドウなお手入れなんてしなくてもいいかもしれません

 

これは使い捨ての靴を下に見ているわけではなく、目的に合った使い方です

安価な靴を買って「お手入れも修理もせずにドンドン履き替えていく」のも一つの選択肢だと思っています

 

それぞれ自分に合った「履き方」があるんですよね

ムリにいい靴を履くこともないし、「傷んだら捨てる」も立派な信念です

 

一方、「この靴はできるだけ長く履きたい」ということなら、キチンと手入れをして適切なタイミングで修理メンテナンスに出すべきです

 

そのために必要なお手入れにおける「クリーム選び」をまずは書いていこうと思います

 

※ここでは表革(スムース革)のお手入れ方法を書いています

 

まず長持ちさせるうえで絶対に使ってはいけないのが「塗るだけ」「スプレーするだけ」でやたらと「ピカピカに光る」商品です

 

そんなカンタンな方法で光るということは「光る成分を表面に付着させてるだけ」なので、使い続けると革がダメになってしまいます

 

インスタント系の商品は

 

・L字型のプラスチック容器の先にスポンジがついている「塗るだけで光る液体」

・タワシぐらいの大きさのケースをパカッと開けるとスポンジになってて、それにしみ込んだ溶剤を「塗るだけでピカピカ」になるもの

 

なんてのが一般的ですが、これらを使っていいのは「使い捨ての靴」だけです

 

つぎに、靴クリームというと「固形の靴墨」を思いうかべるかもしれませんが、実はこれはクリームではありません

 

※丸く薄い缶に入っているワックスのような溶剤です

 

靴墨は、つま先やかかとなど「固い部分」をピカピカに光らせるためのものなので、お手入れというよりはお化粧に近い感じです

髪の毛で言うと整髪料に当たるものなので、お手入れをした後「もっと光らせたい」ときに使ってください

 

ではクリームは何か?というと「乳化性のクリーム」のことを指しています

革に潤いを与えるための「油」と表面を守るための「ロウ」が入ったものです

 

※乳化性とは練り状のことで歯磨き粉のような柔らかい溶剤です

 

革とは「動物の皮膚」なので、放っておくと油分が抜けてカサカサになってしまいます

それを補うために「油分」が必要で、さらに靴はアチコチにぶつけて傷つきやすいので、表面を守るためのロウの「バリア」が必要なんです

 

※生きている動物の皮膚が「皮」で、死後に防腐処理をしたのが「革」です

 

バリアである「ロウ」を少なくして水分を増やしたのが無色のジェル系やローション系です(デリケートクリームなど)

これらは革への浸透力が高い反面、表面を守る力は弱いので、買ってきたばかりの靴の最初のお手入れに使ったり、カサカサになってしまった場合の下地に使ってください

 

※靴は製造から手元に届くまでに乾燥しており、買ったらまず潤いを与えてください

 

またジェルやローションは「普通に磨くとシミになってしまう」ようなデリケートな革にも有効な場合が多いです

これは水分が多いため(少なめに配合した)油分が「全体に均等に」いきわたりやすいからです

 

この「均等」がものすごく大事で、油分の多く染み込んだ部分とうまく行き渡らない部分との油分の差、そのムラがシミになるんです

 

といってもどの溶剤がどの革に適しているかは初心者にはわかりませんので、ヌメ革やアニリン染めなどの「すぐシミになるヤバい革」は購入時にお手入れ方法をしっかり聞いください(魚など特殊な革も同じです)

 

水を1滴落とした瞬間にしみ込んでしまうような革は、だいたいヤバい革です

これらはものすごくシミになりやすく、普通のクリームで磨くとトンデモナイことになります

 

ちなみに、そういったヤバい革のお手入れは「必ず目立たない部分で試す」なんていわれますが「それってどこのこと?」なんて思いませんか?

 

具体的な「目立たない部分」というのは

 

・シュータンの根元のほうで靴ヒモを締めると「見えなくなる部分」

・履き口の淵の、どうせ履いていけば汗や皮脂でシミっぽくなる「シミになってもいずれ気にならなく部分」

 

などのことです

 

そういった「見えない」「気にならない」部分が、いわゆる目立たない部分なんですね

 

まずはそこでお試しを。

 

一方、水を落とすと水滴が玉になるタイプの革なら普通のクリームを使っても問題ないことが多いです

この場合は乳化性のクリームでガンガン磨きましょう

 

ビン入り50mlぐらいの容量なら、700円以上するモノならだいたい大丈夫です

チューブ入りはチューブやスポンジ代が上乗せされていますので、800円以上ぐらいが目安かな?

 

やたらと高いものは使っている油とロウが高級なので、それだけ革の状態をよくしてくれます

とはいえ(そのうち書きますが)大事なのは「何を塗るか」よりも「キチンと落とす」ことなので、定期的にクリーナーでちゃんと落とすなら何でもいいと思います

 

あまりに安価なのは不安ですが、上記のようなモノならだいたいOKだと思いますよ

 

※ミンクオイルは全くベツモノなのでそのうち書きます

 

 

まとめると

 

・どれぐらい大事にするかを最初に決める

・使い捨ても立派な信念

・大事にする靴にはインスタント系は使わない

・使うクリームは乳化性

・ジェルやローションは下地に使う

・ヤバい革かどうかは専門家に聞き、クリームも選んでもらう

・ヤバくない革は、ある程度の金額以上のクリームで磨く

 

って感じですね

 

そして最も大事なのは「”気合を入れて買った靴”でいきなり試さない」ということです

 

普段から靴磨きをやってていろいろ理解しているのならいいんですが、初心者なら最初は普段履いている靴で練習をしてください

それで問題なければ「大事にしたい靴」に使いましょう

 

なぜか初心者の方ほど、ぶっつけ本番で無謀なチャレンジをしがちです

 

練習するための靴がなければ中古で数百円程度で買えばいいですし、修理屋に相談すれば練習用の靴があったりします

 

そういったもので必ず練習をしてから本命の靴を磨いてくださいね

 

現場からは以上でーす

 

 

長くなったのでクリームの色選びなどは次回に書きます

 

 

 

 

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