靴の問題解決 〜幅伸ばしについて〜
前回チラッと幅伸ばしについて書きましたが、それについてもう少し詳しく解説しようと思います
幅伸ばしとは文字通り「靴の幅を伸ばす」ことですが、実はけっこう勘違いが多いようです
順番に見ていきましょう
①つま先から3センチぐらいは伸びません
靴のつま先には硬い「芯」が入っているので、その部分を伸ばすのはムリです
伸びるのは「指の付け根あたり」と考えておきましょう
②幅伸ばしが必要じゃないかもしれません
この事例、かなり多いのですが
サイズが緩い→足が前に突っ込む→つま先が痛いから伸ばして欲しい
というパターンです
履き口の淵が甲に当たって痛いのも、おそらく同じ原因ですが、上記の通り「サイズが緩い」のが原因ですので、伸ばすと余計に酷くなります
この場合は
・前だけの中敷きを入れて様子を見る
・ヒールをカットして傾斜をゆるくする
・ストラップを取り付けて前にズレないようにする
などが効果的な対処療法になります
それでもダメならスッパリ諦めることも大事かもしれません
③縦のサイズは伸びない
「縦を伸ばして欲しい」という声もありますが、それって要は「サイズを大きくしてくれ」ということで、それはムリです
伸ばし器に入れて力をかけることはできます
でもそれで変わるのは、カカトが外側に開くだけです
シューツリーの回でも書いたようにそれが酷くなると革が裂けますので、実はこれって縦に伸ばしているのではなく「靴を壊している」だけなんですね
それで履けるようになったとしても、そもそものサイズが合っていない可能性が高いので、あまりいい選択とは思えません
革靴を履いていくと足の形に合わせて革が伸びていきますが、この状態をできるだけ早く作るのが幅伸ばしという作業です
そして、その状態でキチンと履ける靴を選ぶのが、サイズ選びでかなり重要。
靴のつま先はだいたい「先に向かって細く」なっているので、革が硬いうちは足が前に入りにくく、それが原因でワンサイズ大きめの靴を選びがち。
その結果、革が馴染んで伸びると足が前にズレて、そのぶんカカトに隙間ができてカポカポ脱げてしまうんですね
※足と靴がボールジョイントの位置をあわせようとするため
そうならないように「ボールジョイントの位置」をちゃんと理解してサイズを選ぶ必要があります
ボールジョイントについてはこちらを
革が伸びてボールジョイントの位置が一致した状態が目指すべき完成形で、それを購入時にイメージするのが本当に大切なんです
とはいえ靴によっては革がなかなか伸びない場合があります
・つま先の装飾で革を重ねているようなタイプ
・エナメルなど伸びにくい素材
このへんの見極めはなかなか難しいので(以前も書きましたが)靴屋さんと同じ施設に入っている修理店に購入前の靴を持っていき、プロに見てもらうべきだと思います
もしくは許可を得て撮影し、その画像を行きつけの修理店に送って見てもらってもいいですね
「あ、これは布なので伸びません」
なんてアドバイスをもらえれば、間違って購入することも減りそうです
まとめると
・幅のばしで伸びるのは指の付け根あたり
・本当に幅伸ばしが必要か?修理店で見てもらう
・縦は伸びない、壊してるだけ
・購入時はサイズ選びを慎重に、革が伸びた状態をイメージする
・購入予定の靴を修理店で見てもらってアドバイスを貰うと安心
こんなところです
現場からは以上でーす